Every Blue

Every Blue

2022.10.12 | Silent Room Records

Music, Words, Vocal & Guitar:Nozomi Nobody
Guitar:潮田雄一
Drums:吉木諒祐(THE NOVEMBERS, MEAT EATERS)
Recording, Mixing & Mastering:君島結(ツバメスタジオ)
Artwork from “0:00:10:09 15fps” x 10 books(相島大地)

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“Every Blue”は、2019年、コロナの前の年に奄美の加計呂麻という島にいた頃に書いた曲です。わたしは加計呂麻で4ヶ月の間、海に面した宿で住み込みで働き、宿の仕事をしながら、毎日のように海で泳ぎ、焼き菓子を焼いたり、ハンモックに揺られて本を読んだり、子どもたちと遊んだり、なんかそんな風にして過ごしていました。

ギターは日々弾いていたけれど曲はびっくりするほど出来なくて、でもどうにか一曲は作って帰るぞと心に決めて、ほとんど絞り出すようにして作り、海辺の部屋の前にマイクを立てて録音をして東京に戻りました。そのときの音源は、島で撮り溜めた写真を展示した代々木上原hako galleryでの個展“Every Blue”にあわせて作成したブックレットと一緒に限定で販売しました(ブックレットは完売していますが、デジタル版も作ったのでご興味のある方はどうぞ)。

この曲に関してそれ以上どうこうという気持ちは特になかったのだけれど、今年の春に島に数日帰り、おばあの唄を少し録音するなどして東京に戻った成田からの帰り道、すっかり夜で、最寄りの駅から家までの途中にある橋の上を小さなスーツケースをずるずる引きずりながらくたびれたなーと思って、遠くの灯りや真っ黒く光って揺れる川面をぼんやり眺めていたらこの曲がふっと口をついて出てきて、そのことにわたしはちょっと驚いて、そして素直にあれなんかけっこういい曲かもと思って、そうして録音してみようかなと思ったのでした。

潮田さんにギターを弾いてほしい、ということを真っ先に思って、それ以外の楽器を入れることはあまり考えていなかったのだけど、イメージを膨らませていくうちにドラムがあってもいいかもという気持ちが湧いてきてでもハマるかわからないなあと思いながら吉木さんにドラム入りますかねどうですかねと相談をしてみたらやり方は全然いろいろあると思うよと言ってくれて、エンジニアは迷わずいつもお世話になっているツバメスタジオの君島さんにお願いをして。

録り方をどうするかというのはとても迷って、でもスタジオで吉木さんと君島さんと話していたらなんとなくせーのでやってみるかという流れになって、君島さんがわたしの言葉をすいすいすいと変換して組んでくれたアンプやエフェクターにわたしのギターを繋いで、吉木さんが大きな機材車で運んで来てくれたドラムセットを組んで、せーので何度か演奏をして、確か3回目のテイクだったような気がするけれどいまの良かったねと言って、でもわたしのギターが転んでしまった箇所があってちょっと気になるよねどうかねと言ってもう一度試してみたけれどやっぱりさっきのテイクの方がいいねということになって、そのテイクを基にわたしの歌を録って、最後に潮田さんのギターを録りました。ドラムをダブルで録るアイデアも、わたしのギターの音作りも、潮田さんのギターのフレーズも音作りも、ぜんぶスタジオでその場で生まれ出来上がったもので、わたしは今回はそういう風に、決まったものを録るのではなく、言わば行き当たりばったりで肩の力を抜いて、出てきたものをただ録るということをしてみたいと思っていたから、思っていたように、思っていた以上に、そんな風に録れて、潮田さんのギターも吉木さんのドラムも君島さんの音作りも最高で、わたしはとても嬉しい。これまでたくさんお世話になってきたツバメスタジオが移転する前にもう一度録音ができたことも嬉しかったな。

アートワークは相島大地さんの『”0:00:10:09 15fps” x 10 books』という作品からお借りしました。海面を撮影した映像から切り出した画像が10冊の本に綴じられていて、パラパラめくると光と時間の移ろいを本の厚みという質量とともに感じることのできるとても素敵な作品です。はじめて目にしたとき、わたしの思い描くわたしの好きな海のイメージと重なって、だからこの曲を録ると決めたときから相島さんのこの作品のことが頭にありました。アートワークに使わせて貰えないかという突然の申し出を快諾してくれ、さらに一点だけでなく複数点見られる仕組みがあったら面白そうというアイデアをいただいて、今回はじめてCanvasというものを作りました。Spotifyユーザーの方はぜひ合わせてお楽しみください。

そんなわけでつらつらと書いてしまったけれど、気がつけば約3年ぶりのリリースになりました。いろんなことがあった。本当に。みんなそうだと思うけれど。
久しぶりに自分の作品の録音をしてみて、当たり前に楽しくて、曲が形になることはやっぱり特別な悦びがあって、わたし自身はまったく相変わらずで進歩がないなと思ったりもするけど、でも自分の中にあるそういう小さな光のような気持ちをちゃんと大切にしたいなといま思っています。

わたしの音楽を待ってるよと言ってくれたひとたちに感謝しています。ありがとう、と直接言いたい、でもその代わりに曲が届くといいな。

作りたい作品があって、実は去年からずっと準備をしているのだけど思ったより時間がかかっていて、お披露目はどうやら来年になりそうです。これまでとはちょっと違う作品にしたくて、ああでもないこうでもないと少しずつ向き合っているところです。また気長に待っていてくれたら、励みになり活力になります(本当に)。ライブもまたちょっとずつやっていきたいと思っているから、良きところで良きときに交差できたらいいね。
まったくひどい世界になってしまったけれど、考えることも知ることも感じることもそして信じることも、諦めずにいたいと思うし、そのためにできることをできるときに、積み重ねたいと思う日々です。あなたの健やかで穏やかな日々を願っています。

“愛せないすべても、everything is blue.”

2022年10月
Nozomi Nobody

“Every Blue”

あおのあおに滲むボーダー
遠くなる
I don’t hear you anymore

わからないまま
Just time is passing away
変われないままでも
そのままでいいと

Every blue
あなたのことも
Every blue
愛せないすべても
Everything is blue

言葉は知らない
名前のない気持ちだけがある

猫のように
風のように
I’ll be gone without saying goodbye
でも泣かないで

Every blue
あなたのことも
Every blue
このすべては
Blue

あおのあおに滲むボーダー

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