2022.02.10 とっぱ

さすがに寒い。朝目が覚めてなかなかベッドを出られずにスマホをスクロールしていたら視界の端に動くものが見えた気がして目を上げたら雪が降り出していた。大雪の予報だったけれどいまのところ積もる向きはなさそう。12時42分現在。

週末、某大学の卒業論文についてのオンライン討論の場になんとNozomi Nobodyがコメンテーターとして出演させていただくことになっており、今朝論文が届いたので早速拝読。ループステーションについての論文で、その生徒さんを受け持つ教授の方が以前わたしがツアーで四国に行ったときにライブを見てくださっていたそうで、最近あれこれの活動で見かけるなどしていたらしく声を掛けて下さったのだった。こんな風にご縁がつながることもあるのだなと驚きと恐縮と嬉しさと。論文はもちろんとても興味深く、学生さんとお話しする機会というのも普段滅多にないのでとても楽しみにしている。

コロナ禍に入っていろいろな活動に携わるようになって、オンライン番組などに呼んでいただく機会が増えた。去年末には藝大のトークイベントにも呼んでもらって、それはわたしにとってはけっこう緊張感のある出来事だったけれど蓋を開けてみればけっこうしっかり話すことができて、とても有意義な良い経験になった。それでもわたしはやっぱり話すということには苦手意識がありうまくできなくてひどく落ち込むことも多いから今後のことはわからないけれど、もしこれからもこういう機会が増えていくならそれはそれでとてもおもしろいことだなと思うようにもなってきた。学生さんの大切な機会、誠実な言葉で接したい。

きのうは一日家にいたのだけど、夕方前くらいになって少し散歩したい気持ちになって、部屋着の上からコートを着込んでマフラーをぐるぐる巻いて、わたしの家の近くには本当になにもないのだけど、多摩川とそれから唯一韓国の食材を扱っていて韓国料理のイートインもやっている小さな商店があり、和歌山の姉の家で過ごす最後の夜にみんなで鍋をして、そこにキムチやらお餅やらを入れて食べて、だからなんとなくキムチとお餅が食べたい気持ちになっていて、そのお店には手作りのとてもたくさんの種類のキムチが売っているからそれらと、それから年明けに韓国にルーツを持つ友達の家でご馳走になった「トッパ」という小さな楕円形の平たいお餅がとても美味しかったら、それらを散歩ついでに買ったらちょうどいいなと思って、確か現金しか使えなかったような気がしたからお財布から特に深く考えず千五百円を抜き出してポケットに突っ込んで家を出た。日が暮れる少し前の淡い空に薄い雲がすーっと伸びてかかっていて、中学生か高校生か、3人組が河川敷に自転車を停めてなにやらはしゃいでいる声が聴こえた。音楽も聴かずゆっくり歩いて一度商店を通り過ぎて川沿いの道をしばらく先まで行って、このままもしもっと先まで行ったら商店の閉店には間に合わないかもしれないなと思っていたけど、体は割とすぐに踵を返して折り返し、閉店間際の誰もいない店内に間に合った。3種類で1000円のキムチ(白菜、大根、長芋)とトッパのたくさん入ったパックをレジに持っていくとPayPayのバーコードが貼られていたので結局PayPayで払った。そうして店を出たら今度は春雨と豆腐も欲しいなという気持ちになってそのままもう少し先のスーパーまで歩いた。そのスーパーはPayPayが使えず、わたしはクレジットカードも持たずに現金千五百円しか所持していなかったわけだけれど、野菜やビールやワインその他も買いたくなってしまって頭の中で大雑把に計算をしながらそれらを慎重に選びレジに持っていくとお会計は1470円だった。心の中で小さくガッツポーズ。あっという沈み始めた夕日を見ながら家に帰り、買って帰ったそれらを家にあった白菜や大根などと一緒にぐつぐつやってひとり鍋をした。

去年から向田邦子さんのエッセイ集を読んでいるのだけど、食べ物についてたくさん書かれていて、わたしは食べることも作ることもとても好きだからそれだけでほとんど無条件の好感を持ってしまうのだった。わたしは向田邦子を読んだことがなかったのだけど、開けっぴろげでユーモラスで、とてもチャーミングな方だったのだろうなと想像している。