2022.05.12

きのう。

新しく作っていた曲のデモが大体出来上がって何度も聴く。まったく意識せず作ったのにそれはすっかりSufjian Stevensを感じさせるものになっていて、そのことを興味深く思った。デモが出来ると誰かに聴いて欲しくなる。きっと波ちゃんは気に入ってくれるだろうという気がして、書き出してスマホに入れ、夕方前に家を出た。

まずはツバメスタジオへ機材を返しに。最寄駅のそばに美味しいたい焼き屋さんがあって、ふたつ買っていて君島さんと一緒に食べようかと思ったけれど、スタジオに行く度に毎度毎度上がり込んでお茶を淹れてもらって話し込んで帰るのも図々しいような気がして、いつもはそれほど気にせず甘えさせてもらっているけど割と最近行ったばかりだしなぁと駅前でさんざん逡巡した挙句、今日はさっと失礼しようと決め、たい焼きは買わずに電車に乗った。でも結局やっぱりわたしはあの気持ちの良いソファに腰を下ろし、お茶を淹れてもらって、しばらくお喋りをしてからスタジオを後にしたのだった。やっぱりたい焼きを買っていくんだった。わたしは二択がひどく苦手で、かつて弟に「自分が思う方と逆を選んだ方がいいよ」と忠告されたことがある。いま新しく作っているものの話などをし、またレコーディングの相談をさせて欲しいと伝えると君島さんは楽しみです、と言ってくれて、何でもない会話だけどその言葉を嬉しく思った。

波ちゃんに指定された人形町までのんびり歩いて向かう。気持ちのいい夕方の気候の中を20分ほど。人形町はたぶん初めて行く場所だったけれど、飲み屋がたくさんあってぶらぶら歩くのは楽しかった。波ちゃんが予約してくれていたお店のオープンまではまだ少し時間があったので、適当なお店で一杯だけビールを飲んでから向かった。波ちゃんに会うのはいつかのスタジオぶりで、少し久しぶりだった。わたしたちはそれぞれワインと、お店のひとがおすすめと言った前菜の盛り合わせを注文した。盛り合わせの一皿にはそれはたくさんの種類の前菜が盛られており、波ちゃんはメニューを見てこれも食べたい、これ何だろう、とか言っていたけれど、それだけでお腹いっぱいになってしまい他の食事は何も頼めなかった(おかわり自由ですといって出されたほうれん草のパンとそれに添えられたバターが美味しくてわたしたちはそれを2度おかわりした、バターが独特の香りがありふんわり柔らかくて、波ちゃんがお店のひとに訊いたところかぼちゃを混ぜているとのことだった)。

きのうはわたしも波ちゃんも早々に酔っ払って、ざっくばらんにあれやこれやの話をして、とても楽しかった。わたしは波ちゃんに映画を撮ることを勧めて、波ちゃんは本当に撮ろっかな、と言っていた。制作をしていることを話すととても喜んでくれて、デモを聴いてもらうと聴きながら「あぁ、もう好き」とか、あとはなんだっけな、なんか、色々言ってくれて、でもわたしが最後適当にギターでじゃーん、と終わらせていたことについて「じゃーん、ではないわ」と言い放ち、よくわかってるなぁと思って感心した。

デザートのメニューにナポレオンパイがあり、めずらしいなと思って注文しようとしたけれど今日はなくて、と言われて代わりにプリンを勧められたので言われた通りお願いするととても大きなプリンにバニラアイスがどかんと乗ったものが出てきた。最近流行りのとろける系プリンではなく、しっかり硬さのあるプリンで、わたしは「良いプリンだ」と言って甘いものを好まない波ちゃんにも勧めた。波ちゃんは試しに少し食べて「美味しい」と言って、また何口か食べて「甘いもの目覚めたかも!」と言っていた。プリンは本当に大きくて、本当の本当にお腹がいっぱいになった。それでも完食したわたしを見て波ちゃんはびっくりしていた。

わたしたちはすいすいワインを飲んで(波ちゃんはわたしの1.5倍かもしかしたら倍飲んでいた)いい気分で別れた。波ちゃんはもっと話したいことがあったのにどうでもいい話ばっかりしちゃったと言っていた。わたしのデモを聴くのに取り出したイヤフォンを店に忘れていて、店員さんが追いかけてきて届けてきてくれた。

わたしは久しぶりにすっかり酔っ払ってふわふわと家に帰った。吐くかなと思ったけれどきのうは大丈夫だった。

家に帰ると現像に出していたフィルムが戻ってきていて、定まらない頭のままデータを確認すると思ったよりちゃんと撮れていて、友人たちに送ってからベッドに入った。

きのう君島さんから受け取った、島の唄を収録したCDRをさっきポストに投函した。とても嬉しい気持ちで。波ちゃんも奄美が好きだから、今度一緒に行こうと、きのう話した。さよこさんに送るために浜で拾ってきた石をそろそろ送ろうと思って、そういえば砂がついたままだったことを思い出して、さっきお風呂場で軽く水で流した。乾かすためにそのままお風呂場の床に並べたら、大小さまざまの白い石たちがころころ隣り合っているその様子をかわいいと思った。