2022.10.09 写真

日記を何度か書いて、書き切れず、何度目かの日記。今日はまた一日出掛けて、昼に両親と食事をし、わたしの日常では半年かかっても食べないであろうたくさんの種類の野菜を食べて、はち切れんばかりになって、しかしそれから日本に最初にモンブランを持ってきたらしいお店に行きケーキを食べた。わたしは迷わずモンブラン。母はプリン、父は栗のロールケーキ。モンブランはとても好きなケーキなので割と食べてきたと思うけれど確かにとても美味しかった。しかし胃が崩壊して、夕方までずっとお腹が痛かった。両親とわたしと3人きりというのはめずらしいので会話に困ったりするかしらと思っていたけれど案外そんなことはなく、朗らかな時間だった。

ふたりと別れて苦しいお腹を引きずって東京駅まで。何やら写真に関連する割と大規模なイベントが駅周辺のあちこちで行われているらしく、un/baredの最新回で写真を撮ってくれたカリナちゃんが参加しているWombというグループがブースを出し、彼女たちが作っている雑誌の最新号の販売をしているということだった。わたしはこの雑誌をとても楽しみにしていて、いつ出るのかいつ出るのかと思ってチェックしていたのだった。カリナちゃんと少し話して、雑誌を買って、すぐ帰ろうと思っていたけど会場でもらったイベントのパンフレットを見てみれば木村和平くんの名前を見つけた。工事現場一帯を囲う大きな白い壁に、京橋の街を映した和平くんのモノクロームの写真が詩と一緒に展示されていた。はじめとても近い距離で見て、工事現場の壁に貼られたその質感というか素材感なのだろうかわからないけれどあまり和平くんの写真という感じがしないなと思いながら端から端までを歩いて、それから道路の反対に渡って離れたところからみてみたそのときにああ和平くんの写真だ、と思った。柔らかく、静かな、光。わたしは彼の写真がとても好きだ。

そうして、カリナちゃんが中古カメラの販売会もやってるよーと教えてくれて何となく予感めいた行ってみようという気持ちが沸いて行ってみるとひとつのカメラが目に留まった。そのブースの眼鏡のおじさんがタメ口で話しかけてきたのであぁこれはよくある女だから舐められてるやつかなーと一瞬警戒したのだけど、そうではなくただそういうひとのようだった。ので、わたしも砕けた口調でいろいろ質問して教えてもらった。カメラを買おうなんてこれっぽっちも思っていなかったけれど、ほとんど迷わずに購入を決めていた。支払いは現金のみと言われたのでわざわざ近くに降ろしに行って再び戻ってお会計をした。おじさんが「これ以上ないくらいぴったりのひとに買ってもらえてよかった」と言うので「そうなの、なんで?」と言ったら「えーだって変なオタクとかおっさんに買われたら嫌じゃん、これは女の子のためのカメラだから」と言っていた。軽量で小型に作られている型だという説明を受けていた。女の子のためのカメラ、というカテゴライズをわたしは気に入らなかったけれど。これは本当におすすめのカメラ、とも言われて、セールストークなのか本音なのか、と思ったけれど判断はつかなかった。レンズのキャップが付いていなかったので、おじさんが領収書に押すハンコを探している間に近くのブースに合うキャップがないか見に行くとすぐにぴったりのものが見つかって(50円!)、あったよ〜と見せるとおじさんはとても喜んでいて「やっぱりなんか持ってるんだね」と言った。セールストークにしろ本音にしろ上手いなぁと思ったけれどわたしもまんざらでもない気持ちだったことを認めざるを得ない。というか実際そのカメラをとても気に入っていた。

そんなわけで久しぶりの衝動買い。ずっと使っているフィルムのカメラをずっと気に入って使っているけれど、最近何となくもう少し出来ることの多いカメラが欲しいような気持ちが薄っすらと芽生えてきていて、だからやっぱりちょうど良いタイミングで出逢えたように思う。はじめての一眼。これだ、と思うものに出逢えるのはいつだって嬉しい。少しずつ使ってみる。

家に帰って買ってきた雑誌をじっくりみた。カリナちゃんの写真をとても好きだなぁと思った。

写真を好きだと思うのって、けっこう難しい、なんというか、写真って、言ってしまえばただの写真で、そこにあるものを写しているだけのもので、にも関わらずときにそれ以上のものを、あらゆる気配や空気や音や温度やそういうものを纏って平面の中からこちらに向かってぐーっと迫ってくる、とても不思議な媒体だと思う。でもそういう写真って実際そう多くあるわけではなくて、やっぱりほとんどはただの写真、にわたしには思える。でもそういう中でわたしはカリナちゃんの写真を好きだと思った、そのことを思った。