2023.06.29 蒸気

きのうは笑ってしまうくらい絶望的な気分で、どうしようもないので夜はすごすごと外へ出掛けて行き、下高井戸シネマでゴダールのウィークエンドを観た。わたしはたぶんゴダールなんて名前を知っているくらいで一本も観たことがなくて、いつだったかTwitterで「最近観た映画を問われた大学生だか美大生だかがジブリの『風立ちぬ』と答えたのにたいして坂本龍一さんが「僕らの頃は背伸びしてでもゴダールとか答えたものだ」と言って嘆いた、だか憤った」みたいなエピソードを見かけた、ような薄ぼんやりとした記憶があり(記憶も怪しいしそのエピソード自体の真偽も不明)それがなんとなく印象に残っていた。家を出る前にぐずぐず考えごとをしていたら冒頭15分くらい遅刻してしまい、そんなのはまああまり関係のない映画だったけれどそれでもいちばんはじめ、はじまりというのはある意味でとても大切であろうとは思うので惜しいと言えば惜しいのだけれど。終始ひとびとが罵り合い殺し合いあっちこっちで車が炎上しあっちこっちでひとが死んでいた。フランス映画に出てくる登場人物のあまりの身勝手さにまったく感情移入が出来ない、ということがしばしばあるのだけどその原点はここにあるのではなかろうか、なんて少し思ったりもしたけれどあれはだけどつまるところ国民性みたいなものなんだろうか。そんなことってあるんだろうか。ずっと少し気になっている。そうしてまったく酷いものを観たなぁと思いながら、公開された当時の世界でこの作品がひとびとにどんなふうに受け入れられたのだろうかと考えながら、駅の周りをぐるっと一周あてもなく徘徊し、やってきた各駅停車に乗り込んでゆっくり本が読めるなと思って椅子に座って文庫を開いたけれど思ったよりもうんと早く最寄りの駅に着いて、改札を出るとぱらぱらと雨が降っていてああ雨だなぁと思ってずるずるとほとんど死んだような面持ち心持ちで歩いていればだんだんと雨足は強まってむわっとした熱気と雨の日特有のアスファルトのにおいが下の方から立ち昇ってきてあぁ季節が、この季節が来たのだなと思った。