2024.11.07 リリースの夜

11月6日。『Dawn (Side-B)』リリース。
Side-Bは三年というとても長い時間をかけて作った作品で、なんというか、ずっと作っていたので、出来上がったあともリリースに差し掛かっても、なんだかずっとよくわからないというかあまり実感のないまま進んでいて、だけどきのうリリースにあたっての文章を書いていたら少しだけじんわりと込み上げてくるものがあって、また作品をこうして作ることが出来た、そしてそれをこれからも続けていくのだ、その積み重ねなのだ、ということを思ったのだった。

だけどそんな感慨も束の間、大統領選の結果があっという間に出て、わたしはそれを直視できないような心持ちでだってあまりにも恐ろしいから、なんとも言えない変な夜だった。

ほとんど家にいなかった10月を経て家に戻れば着実に秋は深まっておりよく晴れた空はすこんと抜けてとても高く、朝晩の冷え込みはもう冬のよう。台湾の楽しかった時間がまだ胸の中で小さな灯りのように揺れている。宜蘭に住む友達を尋ねて、彼女が連れて行ってくれた自然食品のお店に台湾の作家さんのなんとも趣のある素敵な陶器が並んでいてわたしは散々迷った挙句マグカップをひとつ自分へのお土産に買って帰ってきて日々愛でながらコーヒーを飲んでいる。さっきは夕食後に今季初めてのチャイを入れてそのカップで飲んだ。あまりに素敵だったからやっぱり平皿とひとまわり大きなマグもみんな買って帰ってくればよかったなと後ろ髪を未だ引かれている。台湾にはまたすぐにでも行きたい。一緒にツアーを回ったみんなにもまた会いたいなと焦がれるようにして思う。こういう気持ちを、誰にどんなふうに伝えたらいいのだろうな。

世界はどこへ向かっていくのだろうね
底はとっくに抜けていて、というかそんなものはもともとなかったのかもしれないけれど、でもこうなったらもう堕ちて堕ちて堕ちるところまで堕ちるしかないんだろうか、だけどDawnは絶望を孕んだというか絶望のなかから生まれた作品だからある意味ではぴったりではないか、というようなことを思ったりもした。わからない。

ガイ君や吉木さんや君島さんがメッセージをくれて、台湾のツアーメンバーがSNSで曲をシェアしてくれて、そういうことがとても嬉しかった。

『Dawn (Side-B)』がリリースされました。
作り始めたのが3年以上前で、この作品に向き合う途中でシングル『Every Blue』の録音があり、それをきっかけにDawn Side-A / Bというアイデアが生まれて今日に至ります。面白いことです

Side-AとBは、インタビューで書いていただいたように、双子のような、対となる繋がった作品なので、これでようやく『Dawn』というひとつの作品が完結したような気持ちです。

歳を重ねたとてべつに何が簡単になるわけでも楽になるわけでもまして明確になるわけでもなく、世田谷の1Kの小さな部屋でひとりぽつんと空白の中にいた二十代の頃となにも、本当になにも変わらないなと思うばかりですが、それでもこうして作品を作り、それを積み重ねることで、わたしは文字通りの生きる糧のようなものを得ているのだと思います

わたしはずっと自分のために、自分のためだけに音楽を作ってきて、そのくせその音楽を誰かに聴いてほしいと願うその欲求との矛盾に長く疑問を持ってきて、だけどいまは、それというのは例えば自分がどんな人間であれ愛されたいと当たり前に願っているのと同じくらい自然なものとして受け止めるようになって、同時に、わたしがこれまでたくさんの音楽や文学の中にみてきた数々の個人的な悲しみや孤独に何度も救われてきたように、わたしがこの作品に込めた個人的な悲しみや孤独が知らない誰かにそんなふうに触れることもまたあり得るのではないかという、そんな希望も持っています

根気強く最後まで一緒に作品に向き合ってくれた池貝くん、君島さんに感謝しています。
本当にありがとうございました。

この作品のための写真だとわたしが勝手に思ってしまったほど、ぴったりの美しい作品を提供してくれたふじこちゃん、ありがとう。

Side-Aを一緒に作ってくれた吉木さん、陽菜ちゃん、庫太郎くんにも改めてお礼を言いたいです。

リリースに当たってお世話になったBIG UP!チームの皆さま、インタビューの機会を下さったBELONG Media矢部さんをはじめ、お力添えいただいたメディアの皆さま、ありがとうございます。

この作品を、どこかの誰か、名前も顔も知らない、でもよく似た悲しみや孤独のなかにいるあなたにおくります。

Nozomi Nobody

【BELONG Media】孤独と絶望を昇華させた双子のEP『Dawn』- Nozomi Nobodyインタビュー