2024.11.23 白い生きもの

すっきりととてもよく晴れているが風が冷たく足先が冷え切っているのがわかる。ウールのセーターといつか母が気まぐれにくれた淡い色のストールを出してくる。真っ白い猫が前足をわたしの腕に何度かかけては引っ込めねぇねぇと言っている、顔を見やるとわたしをじっと見つめ返し、どうしても撫でて欲しいのらしい。こんなに甘えん坊の猫には会ったことがない。

『ギリシャ語の時間』を読み終えてからもう少しハンガンが読みたくて『回復する人間』という短編集をつづけて読み、いま読み終えた。多分だけど回復する人間は買ったあとにすぐ読んでそれきりだったから内容は薄ぼんやりとしか覚えておらず、だけど読み返してみればあぁ、と符号する箇所もあり、やはり物語あるいは文書、だけでなく映画でも音楽でも絵画でも繰り返し通ることでその体験というのは深まっていくものだよなということをこの歳になってようやく実感する近ごろ。

ドライフルーツとナッツがたくさん入ったパンにハイカカオのビターチョコレートを乗せて焼き、コーヒーと迷って今朝は珍しく紅茶を大きなマグに淹れた。だけど冬は寒くてどんな飲みものもあっという間に冷めてしまう。保温機能のついたマグカップというものもたくさん売られていることは知っているけれど、どうしても使う気になれない(美しい素敵欲しいと思えない)だから冷め切った飲みものを飲むことになってもそれは仕方のないことだ。

そういえば年内に引っ越すとほとんど心に決めたりもしていたけれど案外あっさりと覆されてもうしばらくはこの場所でいまの暮らしを続けようという気持ちになった。先のことはいつだってわからない、来年はどこにいるだろうかどこかへ行くだろうか。

真っ白いふわふわとした生きものが膝の上であっという間に寝息を立てているがわたしは冷めた紅茶を飲み終えこの文章も書き終えてしまったので立ち上がらなくてはいけない。無情にも。