2022.04.03

花冷え。寒い。きのうは地元の友人たちと子も連れての花見。多摩川沿いの公園で。予報では曇りでかなり冷え込みそうだったから心配していたけれど、開けてみれば穏やかで風もなくあたたかなお花見日和だった。ひとりが夫を連れてきて、彼が主に子どもたちを見てくれていたから、わたしたちはずっとシートに座って持ち寄った食べものを広げてワインを飲みながらのんびりした。子どもたちは一番上が今度小学二年生、その下が一年生、そして二人が五歳。歳が近いからみんなで上手いこと遊んでいるようだった。

子どものうちひとりにはときどき会っているのだけど、残り三人(うち二人は兄妹、二年生と五歳)に会うのはおそらく三年とか四年ぶりとかで、当たり前にすっかり大きくなっており、しっかりとした意思とともによく喋り、子どもというよりその「人間然」とした佇まいにわたしはやっぱりどうしても驚いてしまうのだった。みんなそれぞれに個性があり、面白くて可愛いなぁと思った。

わたしは昼から飲むとどうしても酔っ払ってしまって、またいつものように後半はシートの端っこで横になって寝ていた。せっかく久しぶりにみんなに会ったのに。とも思うけれど、でもこれくらいがいい、とも思う。

せっかく近くまで来たのだし、と思って実家に寄ることにして、子ども二人を連れた友人と四人で一緒に電車に乗って帰った。「特等席!」と言って子どもたちが確保した電車の端っこのボックス席に座って、わたしの隣の席のお兄ちゃんに「◯◯君と同じ歳のときからママと一緒に遊んでるんだよ」と話した。彼はいま、わたしたちが通っていた小学校に通っている。校庭の遊具や桜の木や二宮金次郎の銅像の話をした。わたしたちが卒業したあと、校舎はきれいに建て替えられすっかり今風の建物になったけれど、校庭はあまり変わっていないらしい。

二人とも母似なのだけど、妹の方は特にそっくりで、帰ってアルバムを引っ張り出して見てみたら同じ顔の子がいるな、と思って、とても懐かしい気持ちになった。あのころ、わたしたちは何を思いながら、どんなことを感じながら生きていただろう。思い出せる出来事はいくつもあるけれど、やっぱり多くのことを忘れてしまったように思う。

駅から歩く道すがら、妹は母と手を繋ぎ、兄は自然にわたしの手を取って、わたしはそれがなんだかくすぐったくてちょっとドキドキして、大人と手を繋いで歩くのは何歳くらいまでなのだろうと考えて、もう二年生になるから、ちょうど最後のタイミングかもしれないと思った。

そうして彼女たちのマンションの前で別れて、実家まで、あちこちに咲いた桜を見ながら歩いた。思いの外酔いが回っていた。前の日もそういえばあまり眠れていなかった。一度家に電話をしたけれど誰も出なかったからもしかしたら二人ともいないかとしれないと思ったけれど、母も父もおり、突然の訪問に驚きつつ快く迎えてくれた。わたしはお腹いっぱいだったから二人と一緒に食卓について、お味噌汁と少しの野菜を摘むなどしながらテレビに映るウクライナのニュースを観た。食後のんびりしながらインボイス制度を知っているかと試しに聞いてみたらやっぱり知らなかった。掻い摘んで説明をして、それについて少し話した。母は年明けに生まれた姉の子どものために服を縫っていた。本を見ながらやっているけどここがよくわからないからこういう風にやってみようと思う、など見せてくれ、わたしたちが子どものころも色々縫ったその残りの生地が出てきた、と言うので見てみるとわたしも覚えがある懐かしい生地がいくつかあった。

父が気前よく途中の駅まで車で送ってくれた。車中で近所の中学(母の出身校)の校舎建て替えに伴い校庭の立派な桜が全て切られたと教えてくれ、全くナンセンスだと二人で話した。わたしがまだ実家にいて、父が長く勤めた会社を退職して家にいる時間が長くなりわたしと顔を合わせる時間が長くなった頃、あるいはおととし一年間実家に居候していた頃、わたしたちはお互いに苛々してしまいちっとも上手くやれなかった。だけど離れて暮らしてこうしてときどき会う分には、お互い優しくあれるしまともな話もできる。だからやっぱりこれくらいの距離感がいいのだろうと思う。明日(つまり今日)は弟も一緒に三人で祖母に会いに行くと言っていた。

最寄りの駅を降りると頭と胃が重たくて、まだ体にアルコールが残っているのを感じた。いつもの橋をのろのろ渡りながら、今日会った誰もが家族のいる家に帰って行ったけれど、わたしだけが誰もいない家に帰るのだなと思って、わたしはそのことをさみしいと思っているのかしらと思いその奥を見てみれば、それはさみしさもゼロではなかったと思うけれどそれよりも不思議とか妙とか、そういう風に少し離れたところから傍観しているような気持ちがあるようだった。

そうして今日は朝から寒く雨。お花見がきのうで本当によかったな。四月。世の中は新年度。