2022.11.18 できれば

あぁいまわたしは傷ついているなぁと思って、傷ついたときにちゃんと傷つくことはとても大切なことだと理解しているけれど、ちゃんと傷つくのにも体力や気力がいるし当たり前に消耗するからやっぱりできればあまり傷つきたくないなぁと思う。なんだかわからんがやたら悲しくて、その悲しみがとても重たい。

ここ何日か時折りブラウニーのことを考えていたのだったそういえば、と思ってキッチンに立ち無心で黒いどろっとしたものとさまざまの粉を混ぜる。残っていた豆腐を全部使い切ってしまおうと思ってレシピよりも多い量で作ったのでとても大きなブラウニーが焼き上がりそう。昔母がなにかのときにロールケーキを作ろうとして、でも生地が焼けてクリームを入れて巻く段になって生地が割れてしまったのだったか巻けたけれど不格好になってしまったのだったか記憶が曖昧なのだけととにかくあまり上手くいかなくて、それを横で見ていたわたしが「もっと生地を薄く焼いたらいいんじゃない?」と言った。すると母がキッとした目でこちらを見て「そんなことあんたに言われなくてもわかってるわよ」と言った、母がわたしにそんな物言いをしたのは記憶にある限り後にも先にもそのときだけで、わたしは驚いて、母でもそんな風に感じるのだなと意外に思った。そのことを、さっき、泡立て器をぐるぐるとしながら、白い粉が黒の中に混ざって消えていくのを確認しながら、思い出していた。母はよっぽど苛立っていたのか疲れていたのか、誰のためのケーキだったのだろう。母は手土産にはいつもパウンドケーキを焼いていたのに、ロールケーキなんてなにか特別なことでもあったのだろうか。

今日のブラウニーには生姜をたっぷり入れた。オーブンからいい匂いがしてきた。