2024.06.20 初夏のかおり

あなたにはべつになにも求めていない、だから安心して、と思う。でも、そんなのは嘘だ、とも思う、でもそうだとするならなにを求めているのか、と考えてみてもよくわからない。べつになにも求めていない。とも、やっぱり思う。べつに対象が何であれ、自分がなにを求めているのかよくわからないことはたくさんあり、そんなことばかりだなと思う。

朝どうにか布団を這い出して(東京にいるときはベッドではなく布団で眠るのでいつも腰が痛くなる)洗面台の鏡を見ればきのうの夜出掛ける前にかいたはずの眉毛が消えていて、あれわたしはちゃんと顔を洗ってから寝たんだろうか、と思う、着ていた服をぽいぽい脱いでパジャマを着て歯を磨いた記憶はうっすらとあり、だけどコンタクトを外した記憶はなくでもちゃんと外れていて、だからやっぱり顔も洗ったのかもしれなかった。でも思ったけれど顔を洗って顔を上げたときに鏡を見たような気もいまになってみればする。それなら眉毛が消えているのも当たり前じゃないか。
きのうは夜遅い時間に駅前で待ち合わせてコンビニで缶の酒をいくつか買って、多摩川沿いを散歩しながら飲んだ。わたしはたったの2缶と少ししか飲んでいないのに、お昼を過ぎても胃の辺りにアルコールが残っている感じがする。飲み慣れないものを飲んだからだろうか。なるべくよくわからないものが入ってないのを選んだんだけど。いい季節になって風が気持よかった。コンビニに花火が売っていたから買えばよかったねーとほとんど冗談ででもほんのちょっとだけ本気で言った。わたしはなんかよく喋ったなと思う。わたしは総じて以前よりもよく喋るようになったと思う。でも人見知りは相変わらずというか以前にも増してというか、もう人見知りを隠そうとするのをやめたので喋りはじめるまでには時間がかかるのだけど。週末たくさんひとが集まる場所に行ったら近しい友達ばかりだったのに最初はちっとも喋れず、言葉は出てこないし相手の言うことにどう反応していいかさえもわからず、わぁいまめっちゃ人見知りしてる、と自分で思っておかしかった。

もたれかかったのか抱き寄せたのか、首筋のすぐ隣で大きく息を、つまりそのひとのにおいを、吸い込んだ。覚えておこうと思った。そんなことを思ったのは初めてで、もう会えないわけでもないのにどうしてそんなことを思うのだろうと思った。