2026.04.06

動けなくなるほど胃が痛くなる日がつづいたかと思えば風邪をひき、きのうは一日ブランケットにくるまってずるずると過ごした。今日は大丈夫そうだったので朝のうちにあれもこれもシーツもカバーもパジャマもぜんぶえいえいえと洗濯をした。リネンはあっという間に乾くから気持ちがいい。夕方散歩に出たら酒を飲んでもいないのに無性に煙草が吸いたくなって、帰りのコンビニでものすごく久しぶりに煙草を買った。銘柄にはこだわりがないのであまり吸ったことのない煙草を買ってみたらなんか少し甘くて、なるほど味は確かに違うのだなと思った。よく煙草をくれるひとがそういえばなにを吸っているのかわたしは知らない。緑のマルボロのような気もするけど違うかもしれない。もう二度と会いたくないひとが赤のマルボロを吸っていたのでそれだけは吸いたくない。そうして安っぽいライターで火をつけふーと吸い込めば驚いたことに少しやにくらしてそれというのは酔っ払ったときの感覚に似ていて、そうして新卒で入った会社の先輩のことを思い出した。

彼女は名前をYさんといって、ひどいベビースモーカーだった。事務所のアパートのキッチンの換気扇の下で朝から晩まで煙草を吸うので、彼女しか使わない灰皿はいつも吸い殻でいっぱいだった。石川県の出身で、いつも方言で話した。「のんちゃん、最近どうや?」「これ食べんか?」彼女はいくつだったか、わたしよりたしか10個とかそれくらい歳上で、にもかかわらず給料をわたしと同じくらいしかもらっておらず、いつもお金に困っていた(わたしはそれをひどいことだと思ったけれど彼女はおそろしく仕事が出来なかったので仕方ないとも思った)。お昼にはコンビニのものなのどをてきとうに食べていて、大酒飲みで、心配になるくらい痩せていた。切れ長の目ですっきりした顔立ちのひとだったけれど、顔中の毛穴という毛穴がはっきり見えるほど開いており、これだけ煙草を吸うとこうなるのだな、怖しいな、と二十歳そこそこのわたしは思ったのだった。わたしたちはそれなりに気が合って、ときどき飲みに行ったりもしたけれどあるときベロベロに酔っ払った彼女に信じられないほど失礼なことを言われて憤慨し、店だったか駅だったか忘れたけれどトイレで起き上がれなくなった彼女を置いて帰ったことがあった。そしてそのすぐあとに会社を辞めた。今ごろはどうしているだろうか、当時から付き合っていた歳下の彼と結婚し子どもが生まれたと聞いたのももうずいぶん前なので、子どもももう高校生とかもしかしたらもっと大人になっているのかもしれない。煙草は妊娠したときにやめたのだろうか。

立て続いていたまとまった仕事が先週ようやく終わったので今月は久しぶりに自分のことにたくさん時間を使える。ライブの準備と曲作り、あとは本を読む。大好きな本の原書を最近ようやく買ったので、2冊を同時に開いて並べて行ったり来たりしながら読んでいる。カルメンマリアマチャド、愛してる。あまり外にも出たくないしひとにも会いたくないのでちょうどいい。なるべく予定を入れずに過ごしたい。季節がよくなったから、ベランダ用の椅子を買おう。キャンプとかで使うような折りたたみの。ドリンクホルダーかサイドテーブルが付いているのがいいな。桜はあちこちにまだ咲いているけれど、盛りを過ぎるとなんとなくもう用はないような気持ちになってしまい薄情というかなんというか。まぁでもそんなことは桜にしてみれば知ったことではないのだけど。5月のワンマンが終わったらどこかに行きたいな。今年こそ、今度こそ、どこかに行きたい。そうしてベランダに出てもう一本煙草を吸う。こんなふうにベランダで煙草を吸うひとたちの総称かあったなと思うけれど思い出せない。蛍族?なんかどうでもいいことばっかりだなと思う。風がよく吹いている。