2022.07.29
きのう織愛から連絡があり、今日の夜渋谷でライブがあると誘ってもらってちょうど空いていたので行くと返事をして、そうして観たい映画があったので時間を調べると夕方ちょうど良い回があり、そうしてそれからあぁ髪を切りたいなと思いつきダメ元で美容師さんに連絡を入れてみたらこれまたちょうど良い時間の予約が取れた。
予約より少し早く表参道に着いたので近くのセレクトショップにふらりと入ると素敵なワンピースが目について、長いこと服も買っていないし欲しいと思えるものに出会えることも稀だから多少値が張っても買ってしまっても良いかもしれないと思いながら値札を見てみればなんと10万円だった。とても素敵だった。なんとなくジョニミッチェルを思わせるドレスだった。
髪を、また伸ばそうかと思っていたのだけど、きのう急にとても短くしたくなって、今日ばっさりと切った。久しぶりのショートヘアだけれどいままでしたことのない感じの髪型でとても新鮮。まだ慣れない。切り終わって鏡を見て、割と個性的だしマニッシュだからこれはモテなさそうだ、と思い、そうして、これで街で変なひとに声をかけられたり、よくわからないひとに好かれることもなくなるだろう、もっと早くこうすればよかった、と思った。そうしてそれからその思考のというか、その思考に至らしめているこのすべての馬鹿馬鹿しさ下らなさを思って心底辟易した。なんでそんなふうに、こんなふうに、わたしが、思わなくてはいけないんだろう。
時間がぎりぎりだったので表参道からタクシーに乗り渋谷まで。大急ぎでチケットカウンターに駆け込むと受付の女性が予告編の残り時間を丁寧に教えてくれああ間に合ったよかったと思っていると、その女性はなんと友達の友達でライブハウスで何度か会ったことのある女の子だった。わたしは存在感が薄いのかひとに気づかれないことが多く、髪型を変えると特にそうなので当面は誰からも気づかれないだろうと思っていた矢先だったのでわたしに気づいた彼女に感心した。映画はとても楽しみにしていた映画だったのだけど、なんだか身が入らず途中で少し飽きてしまった。集中力がすっかり落ちてしまったように思う。映画館を出ると19時だというのに空はまだ明るくて、ようやく遠くに赤みがかった雲が見えるくらいで、すっかり日が長くなったのだなと思った。久しぶりに好きなファラフェルのお店まで歩いてファラフェルサンドを食べた。お店のお兄さんは相変わらずの無愛想っぷりで逆に気持ちがいいほどだった。
ライブには竹ちゃんも来るよと織愛からきいていた。竹ちゃんというのは昔、団欒やその前にははこモーフというバンドをやっていたわたしと同い歳の女の子で、織愛はわたしたちのひとつだかふたつ下で、わたしがまだ世田谷に住んでいたころよくみんなで遊んだり一緒にライブをしたりしていた。わたしの1Kの小さな部屋にふたりして泊まっていったこともある。織愛には最近もときどき会っていたけれど、竹ちゃんに会うのはたぶん4年とか5年とか、とても久しぶりだった。今日は団欒でギターを弾いていたあししのバンドも出ていて、わたしはそのバンドの噂というか自分のバンドでギターを弾いているときのあししの良さを当時ふたりからよく聞かされていたのだけど、ついぞ観る機会がなく、巡り巡って今日初めて彼のバンドのライブを観た。歌っていないのに完全に彼が主役だった。ギターヒーローだった。とても、とてもよかった。久しぶりに会う竹ちゃんは全然変わっていなくて、いっとき体調を壊していたのをSNSでみて心配していたけれど、いまはまあまあ元気、といった感じだった。みんないろいろある。少し近況報告と昔話などをして、織愛にも挨拶して帰路。暑い中よく活動したのでなんだかくたびれた。美容室さんから連絡がありサングラスを忘れてきたらしい。なにか忘れているような気はしていたのだ。
川辺で誰かがギターを弾いているが聴こえる。風が吹いて、わたしの髪はいつもと違う、知らないにおいがする。10万円のドレスが瞼の裏をちらちらしている。