2022.08.12
メモ帳を開いて、なにかメモしておこうと思ったことがあったのを思い出したけれど、その内容は思い出せない。スマホのメモ帳ではなく、机の上のノートに書いた、ような気も、しなくもない。わからない。
きのう、千葉の祖母の家に、めずらしくひとりで。数日前から何となく行こうという気持ちになっていたのだけど当日の朝になってやっぱり気持ちが向かないということもたぶんにあり得るので行けたら行こうと思っていたのだけど、朝になっても気持ちはそのまま千葉に向いていたので、スムージーを飲んで、前日の夜に買って食べなかったシュークリームを平らげてコーヒーを飲んで、それから祖母に電話をかけた。わたしが彼女に電話をかけること自体めずらしいので、電話口の声は驚き、だけど嬉しそうで、これから行ってもいいかと言うといいけどあなたのところからは遠いでしょう、と少し遠慮がちだった。朝からお風呂に入って髪を洗ったらなんだか疲れてしまって悪いけどお昼を作れないから、着いたら一緒にオリンピック(家からいちばん近くのスーパー)に行って何か買って食べましょう、と彼女は言った。
わたしの家から祖母の家までは2時間かからないくらい。乗り換えは多くないので座っていれば着くし、それほど苦ではない。のんびり本を読みながら向かった。
お昼はなんでものぞみちゃんの好きなものを、と彼女は言って、でもわたしはスーパーで買ったお弁当とかお惣菜を食べるような気分ではなく、前の日に食べようかなと思って結局食べなかったお蕎麦がまだ心に残っていたから、お蕎麦と、お薬味に大場と茗荷と、それからかき揚げと、お芋、かぼちゃ、なすの天ぷらをかごに入れて、それから彼女がなにか口直しになるような甘いものでも買って、と、たぶん自分が食べたいというよりわたしが喜ぶと思ってそう言って、でもわたしはシュークリームを食べてきたしこの数日糖質をたくさん摂っていたから「桃はどう?」と言うと、いいわねということになって、成果売り場に歩きながら桃は当たり外れがある、皮が手で剥けるくらい柔らかいのに当たると良いという話をして、棚に並んだ桃たちをしばらく眺めて色の濃い良さそうなのをふたりで選んだ。
お蕎麦は十割蕎麦を選んで買っていたのでゆで汁があっという間にくず湯のようにとろっとろになって、わたしはお蕎麦屋さんでいただく蕎麦湯が大好きだけど、その様子をみたときの新鮮さにそういえば自分で十割蕎麦を茹でたのは初めてかもしれないと思った。スーパーではなかなか十割蕎麦は売っていない、ような気がするけど、そもそもわたしはあまり自分ではお蕎麦を買わないから知らないだけなのかもしれない。
大きなダイニングテーブルに祖母と並んで座ってふたりでお蕎麦を啜った。彼女は美味しい美味しい、やっぱりひとりで食べてもつまらない、誰かと食べるのが美味しい、と言ってとてもよく食べていた。わたしもつられてというか調子に乗ってよく食べた。そうしてふたりで蕎麦湯も飲んだ。ちょうど食べ終わったところに電話が鳴って、強風で外れて戻らなくなってしまった網戸を直しに伯父(母の兄)がこれから来るとのことだった。祖母が電話口で「いま珍しくのぞみちゃんが来てくれていて」と言っていたので、甘党の彼はきっとわたしへのお土産とかこつけてケーキを買ってくるだろうと瞬間思って、そうして少しして玄関先に現れた彼はやはり小さな背の高い箱を手に持っていた。
叔父に会うのはたぶんお正月ぶりだった。よく日に焼けていて、そしてなんだか白髪が増えたように思った。相変わらず元気そうだった。穏やかで気持ちのよい笑い方をするひと。彼は中学校の教員をしていて、去年から講師?に変わったとかなんとか、とにかくいまは夏休みで、数日後からしばらく北海道に行くと言っていた。自転車を持って新幹線に乗り込み、向こうであちこち走り回るのらしい。いいな。
叔父が買ってきてくれたケーキをみんなでいただいて、それから桃も剥いて(当たりだった、柔らかくて甘かった、祖母はとても喜んでいた)、祖母はとてもよく喋るのでいつもずーっとひとりで話し続けるのだけど、きのうは叔父も来てくれて3人だったので合いの手のバランスもよく17時のチャイムが鳴るまで食卓でずっとお喋りをした。
祖母の昔話を聞くたびに、わたしは彼女のことも彼女の生きてきた時代のことをなにも知らないなと思う、そしてそれらをもっとちゃんときいて、文章にまとめたいと思う。いつもそれを思ってなかなか行動に移せずにいるがそろそろかなと思っている。
叔父が近くの駅まで送ってくれて、車の中で「のんちゃんは聞き上手だね」と言われた。わたしは叔父がいたから聞き上手でいられたのだということを言いたかったけれどあまりうまく言葉に出来なかった。駅手前の信号がちょうど赤になったのでそこで降ろしてもらい、わたしは何となく昔みんなでよく買い物に来た駅前の巨大なイオンが懐かしくなって用もないのに入ってみようという気持ちになって足を踏み入れて、だけどやっぱりなんの用もなくて、子どものころはなにがそんなに楽しかったのだろうと不思議に思いながらすぐに出て、そういえば日焼け止めが欲しいのだったと思い出し隣の薬局に入ってあれこれ吟味してでも結局買わずに出て、帰りの電車の中で天然成分だけでできている日焼け止めをスマホで注文したのだった。
何日か前、ストウブ鍋にいっぱいのラタトゥイユを作った。なすとズッキーニとセロリと玉ねぎ、それから大豆。特別なことはなにもしていないけれどなんだかとても美味しくできてそのことが嬉しい。今朝は何日かぶりにマフィンを焼いた。とても迷ったけれど、久しぶりにピーナッツバターのマフィン、そして最後の最後になって思いついてバナナを入れたらとても美味しかった。ピーナッツバターとバナナなんて最高の組み合わせなのにどうして今まで思いつかなかったのだろう。また作ろう。
クラブでの性暴力がSNSで話題になっていて、本当にしんどい。性暴力なんてどこでどんな風に行われようと最低最悪のものだけれど、究極生きるためのライブハウスやクラブといった場所でそれが行われることに激しい怒りと嫌悪を感じる。浮かんでくる罵詈雑言を飲み込んで他のことを考えてやり過ごしている。
世の中が、あまりにも悪過ぎる、せめてもう少し良くならないとどうしようもない、という話をきのう祖母ともした。