2024.08.03
佐野洋子のドキュメンタリー映画に出てくる女性が「いつかこの好奇心を失ってしまうのではないか、そのことが怖い」と言う、薄暗い部屋で鏡を覗きながら黒く長い髪をといている、彼女の言葉を最近は何となくよく思い出す。いつかもしも音楽を作ることも歌うことも文字を書くことも、何の意欲も情熱も持てなくなったらわたしは正真正銘もぬけの殻ではないか、本当の本当の空っぽではないか。そう考えるのは文字通り恐怖。
少し前に風邪をひいて一日寝込んだ日があった。7度少しの微熱だったのだけどそれにしては身体が重たく頭は痛いし使いものにならずベッドに横になって過ごした。そして全然気がついていなかったのだけど、それ以来わたしはどうやら臭覚を失っていたのらしい。とても良い香りだと言われた花に鼻を近付けても何の匂いもせずおや、と思ってコーヒー豆やカレーの粉を嗅いでみても何の香りもしないのだった。意外と気が付かないものだ。そんなわけで、寝込むほどではないがずっと薄らぼんやりと体調が悪い。目の奥が痛く、後頭部が重たいのと咳が治らない。気持ちもあまりぱきっとしない、のは関係あるのかないのかわからないけれど。そんな8月の始まり。仕方がないのでいつもより少し多めに眠っている。
何か、書こうと思って書き始めたのに何も浮かばないな。8月に入って、今月は来客が続き、それから少しの間出掛けて、戻ったらすぐ東京に行き来月の頭にはライブがあるからしっかりしなくちゃ。そんなことをしているうちに10月が来て、そんなことをしていたら今年も終わるのだな。年内に引っ越すのだろうか。というか、それより前にリリースがある。まぁ、リリースは別に出すだけだから何ということもないと言えばないのだけど。来年はアナログを作って久しぶりにツアーをしたいとずっと考えているけれど、心が決まり切らないのはバンドでのライブが本当に出来るのだろうかという不安が拭えないからで、それはパフォーマンス的なことというよりももっと実際的な、スケジュールとかリハーサルとかあとは採算とか、そういうことで、でもそういうことを考えるのはつまらなく何より憂鬱なので、ずるずる、と。やりたいことをやると決めて体を動かす、ということでしか本当はないのだと、本当はわかっているのだけど。
体調の悪さが(も)手伝ってあまり何もする気が起きず、こういうときは本当に何にもわからなくなってしまう、何にも興味が持てず何も欲しくない何もしたくない、という気持ちになりそうなってしまうともう途端に途方に暮れてしまう、そして自分の進歩のなさに辟易しほとんど絶望するのだった。しかしこうして文字にしてみるとほとほと馬鹿馬鹿しいね。元来極度のさみしがり屋のくせにどうしてもどうしてもひとりになりたくなってしまう、大切なひとたちとわざわざ自分から距離を置いて、なにが欲しいのかなにがしたいのか、自分で全然わからない。