2023.03.16 春

ため息ばかりついている。自分につっこみを入れたくなるほどに。うわの空で窓の外をぼーっと眺めていればあまりに天気が良いのでめずらしく昼間から外に出ようという気になり、散歩がてら駅の向こうのパン屋さんまで。道のそこここから沈丁花のかおりがして、世界はそれはそれは優しく穏やか。春。ツナとトマトのサンドイッチとクリームパンを選んでレジに持っていく。ここのお店のクリームパンは、白っぽいふわっとしたクリームが溢れんばかりに詰まっていてとても美味しいんである。この間レコーディングにも買っていっておやつにみんなで食べた。

コンビニでコーヒーを買って飲み飲み歩いて川沿いの道に出ればいつか写真で見たような色と光が広がっていて思わず足を止めた。足元には菜の花が咲いていてそういえば桜ももう咲いていると言っていたなどこに行けば見られるだろうかと考える。来月に入ってすぐ友人たちとお花見の約束をした。

パンは川沿いのどこかで食べようと思っていたけれど、想像以上に日差しが強く木陰もないので部屋に戻って、あちこちの窓を開けて回る。風があっちからこっちに通り抜ける。そうだわたしは春が大好きなのだった。この部屋に住むようになって3度目の春。あと何度ここで春をみるだろうか。あるいはこれが最後だろうか。いまはこんなにも頭を占拠している出来事でさえ、これまでのすべてがそうであったようにやがて薄れだんだんなにも感じなくなる。つまり、忘れる。忘れていく。ちゃんといつかぜんぶ忘れる。だから大丈夫。

おとといの夜は結局ソファに沈み込んだままラフミックスを何周か聴いたあとベッドに入った。きのうは夜、一曲部屋で録った。スタジオで掴んだ感覚を思い出せ思い出せ、と思いながら手繰り寄せるようにして歌を歌った。ら、うまくいった。良いのが録れたと思う。あと一曲。

歌を歌うってどういうことなんだろうか、みたいなことを改めて思う。ただ歌うだけではなく、それ以上のなにか。だけど、ただ歌う、そのただの歌に宿る、なにか。もう少しだ。