2023.09.26 前夜

椅子に登って自分で選んだ照明器具を外して、ずっとクローゼットのいちばん奥にしまっていた大きなまん丸の蛍光灯をつけてみれば思わず目を細めるほどで、そのあまりの明るさに変な言い方だけどわたしはほとんど引いていた。何のためにこんなにも明るい必要があるのだろうか。やたらと白い。白い、白い。3つある照明のうち、キッチンに取り付けたものがどうしても点かず、蛍光灯が切れているのかしらと思うけれど違ったらどうしよう。あとで怒られるかな。

荷造りは、これは順調と呼べるのかなんなのか、わからない。手の付けやすいところからとりあえず進めていたので残ったものたちを前に首を傾げてしばらく棒立ちするような、いまはそんな段階。だけど別に結局のところすべて箱の中にぶち込んでしまえば良いだけのことだからまあなんとかはなるでしょう。しかし何ひとつ壊れてはほしくないので。パズルみたいにして箱を埋めていく。

とか言って週末は丸ごと、親友と連れ立って温泉に出掛けて、帰りは共通の知人の展示を見て海も見て、美味しいものもたくさん食べて帰ってきてたいそう良い、二日間とは思えないほど濃厚な二日間を過ごしたのだった。楽しかったな。小学校のころからの付き合いなのでもはや人生のほとんどを互いに知っている知り合っている、その掛け替えのなさったら。それが偶然の産物であるということも興味深く感慨深い。彼女をあるいは彼女との会話を通して自分自身を知っているようなそんな側面があるような気がする。

今回の引っ越し先は少し遠いのだけれど、どうせ東京にはちょくちょく帰ってくるのだし、人間関係という意味ではいまの暮らしとさほど変わりないだろうと思っているから、会う機会のあった近しいひとたちにしか引っ越しのことを話していない。わたしはこういうとき、極力自分の話をすることを回避しようとする癖があり、それはほとんど反射といってもいいほどなのだけど、それは何によるものなのかと考える。結局あれこれ訊かれたり言われたりするかも、みたいなことを怖れているんだろうか。そんなことを考えていれば結局わかってもらうことを諦めている、ということなのかしらと今日は思った。でもべつに誰にも彼にもわかってもらう必要なんてまったくなく、話したいひと話したいタイミングで話せばそれでいいのだ。

しかしこの期に及んで会いたいような気がするひとがいて、思わず連絡してしまいそうになるのだけど、この部屋で過ごす最後の夜だからひとりでいた方がいいような気がしている。まあ、そんなのはべつに関係ないといえばぜんぜん関係ないんだけど。それよりなにより荷造りを終わらせなくちゃ。まあどうにか、なんとかなるでしょう。センチメンタルなような、ちっともそうでもないような。